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関西

3_14 奈良の寺内町と環濠集落

<橿原市今井の環濠集落:豪壮な商家が並んでいます>

奈良や京都の古寺社を訪ねと、荘厳であればあるほど権力の匂いがして抵抗を感じることがあります。また、名石や池泉を配した庭園は庶民とかけ離れた美の世界で、単純に没入できません。しかし、別に関西ならではの楽しみもあります。

今井の環濠集落/奈良県橿原市の中心地区今井は、国の重要伝統的建物群保存地区(重伝建)に指定され、重要文化財7棟を含み、多くの歴史的建造物が軒を連ねています。周囲を三重の環濠(堀)で守られた町並みがよく残っています。

室町時代以降、浄土真宗が大和の旧仏教勢力との対立しながら信徒を増やし、寺院を中心とした自治組織を持つ都市を形成しました。江戸時代になっても、幕府は今井の財に力を当てこみ、旧来からの自治の制度を許容したことで、今井は自治形態を保持することができた希有の存在となりました。

住みながら古い町並みを維持していくことは、不便を強いられることも多いに違いありません。それでも、組織を守り抜いた町衆の子孫としての矜恃を持ち続け、旧状を残しています。映画セットや博物館でなく、中世から近世の本物の町並みが味わえます。  

交通便利地で、近くには藤原京跡や橿原神宮もあり、奈良市内から少し足を延ばせば、戦乱を生き抜いた歴史の詰まっている町並が見られます。お土産屋はありませんが、関西旅行の楽しみの一つです。

富田林寺内町/室町期以降、商品経済が活発になるにしたがって、経済力を持った商人たちは、戦火から市街を防衛するため周囲を堀で囲み、土塁などの防衛施設を設けました。さらに大名や寺社の荘園の力の及ばない自治的な都市として自由な取引を始めました。その典型が和泉(大阪)の堺で、イタリアの自治都市と共通するものがあります。しかし、織田信長によって制圧され、堀も埋められてしまいました。

それとは別に、浄土真宗が畿内への布教活動が盛んになり、寺院を中心とした自治的な都市を形成しました。門前町と違うのは、集落全体を寺の境内として、堀や土塁で囲んだことです。今もその形跡をよく残しているのが、重要伝統的建物群保存地区に指定されている河内(大阪府東部)にある富田林です。600年以上も昔の古い町並みがそのまま生活空間として活用されながら今も残る貴重な場所です。これこそ重伝建の保存地区の典型ともいうべき場所です。大阪市内から近鉄線で30分、駅からも徒歩で生きた異空間を楽しめます。

ただ、歴史的建造物の先にある、新興宗教の本部の白い巨大な塔が不似合いでした。

<富田林の寺内町の風景:正面が寺院です>
<富田林の寺内町の風景:正面が寺院です>

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