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冠婚葬祭と人々の繋がり

標準語であり、広辞苑には「恩恵を与える」、「施す」とある。本来他人に物品、金銭の援助を依頼する時に使うが、八溝では、他所に行って「お菓子(がし)恵んでおごれや」と金品をせがむ時に使う。単に「おごれ(ください)」と言うのでなく、「恵む」が付くことから、年長者が年少者に恩恵を施すことになる。山村の人の繋がりの豊かさを内包していた言葉である。

めぐむ

恵む
地域を取り巻く様々な生活

目籠(めかご)が「めかい」となり、さらに転訛して「めけー」となる。広辞苑には、目の粗い籠とある。六つ目編みで、模様も美しい。大きさも手で持つのにちょうどよく、土の付いたジャガイモなどを入れると土が外に落ちるので使い勝手が良かった。水切りも良く、もっとも日常的な籠であった。今はカラフルなプラスチックの容器になってしまっているが、どこか落ち着かない。

めけー

目籠
子どもの世界と遊び

小鳥の種類によって籠の形状が違っていた。ヤマガラは上下に飛んで回転するために細長いもの、しかも胴を膨らませるのが上手な作り方であり、技術を要した。メジロは横に飛んで往復する習性から、籠は横長であったので造り方は簡単であった。学校を終えると肥後守(ひごのかみ)という小刀で竹籤(ひご)作り、錐(きり)で竹枠に穴を開けて形を整えていくが、最後に底の板を取り付ける段になると、歪んでいて入らないことがあった。子どもの頃、きわめて真剣に取り組んだものの一つである。今はメジロを飼うことが出来ない。

めじろっかご

目白っ籠
動物や植物との関わり

小ぶりのうなぎのことで、本県以外でも使われている言葉である。夕方、下げ針に土場ミミズを引っかけて、うなぎが居そうな蛇篭の中などに何本も仕掛けた。翌朝早く見て回ると、糸にグルグル巻きになってうなぎが掛っていることがあった。錐(きり)で頭を刺して身を開いて、囲炉裏で炙り、白焼きにした。うなぎの味の原点である。時には開くのには気の毒な細い「めそっこ」が掛っていることもあった。しかし、「種の保存」などという言葉も、考えもないから、獲れたものはみんな食べてしまった。

めそっこ

農家を支える日々のなりわい

「見つける」の転訛。探して見つけること。かくれっこ(かくれんぼ)でも、誰かを見つけると「めっけ」という。意図的に見つけるのでなく、思わぬ発見も「めっけもん」である。若い世代では使わないが、まだまだ現役である。

めっける

農家を支える日々のなりわい

標準語では「目処が付く」とか「目処が立つ」といって先の見通しが立ったことをいう。また、別の言葉として「針孔」の字を当てて「針穴」としている。子供のころ、老眼になった婆ちゃんの針仕事の「針めど」通しは孫の役目であった。しかし、標準語でいう針の穴だけでなく、鼻孔も「鼻めど」で、気管は「息めど」あって、必ずしも、先が見通せるように貫通しているものを指すとは限らないので、「目処が立つ」ということは、先が見通せるとは限らない。

めど

目処
体の名称と病気やけが

寒さや乾燥で荒れて裂けた皮膚のこと。「めなしが切れる」という。川の遊びをしたり水を使うと皮膚の脂がなくなり、めなしがひどくなると血が滲んでくる。ハンドクリームがなかったから、冬になるといつもめなしが切れ、痛くてひどかった。頬っぺたにも「もめなし」が切れてヒリヒリした。踵(かかと)のあかぎれはぱっくりと傷が切れて、歩くのにも困るほどだった。子ども園でめなしが切れている子は皆無である。

めなし

動物や植物との関わり

種から芽を出す時にも使い、フキノトウの薹(とう)が地中から芽を出すことも「めめぐって」きたという。また、タラの木の芽が大きく膨らむことも「めめぐる」である。春の到来を告げる言葉で、子ども心にもうきうきした。

めめぐる

体の名称と病気やけが

「目やに」の転訛。手も洗わないで目を擦ったりすることから、しばしば眼病を発症した。「めやぎ」が出て、目蓋が粘ついて困ったこともある。顔を洗わず「めやぎ」が付いたまま学校の来る子も珍しくなかった。英国女性イザベラバードが明治11年に『日本奥地紀行』で栃木県を通った時、子どもたちの不衛生の様子を詳細に描き残している。昭和20年代の八溝を訪れたら、同じ感想を漏らしたのではないだろうか。

めやぎ

目やに
子どもの世界と遊び

広辞苑には「めんこい」が東北地方の方言とある。八溝では「めんごい」と濁音化することが多かった。た。可愛いこと、聞き分けが良いことで、乳児が小さくて可愛いい時に使うが、幼児期になって、周囲の大人に気遣いをし、賢い振る舞いをする時にも使った。「めんげーこどもだな(お利口な子だな)」と褒められる。

めんこい

動物や植物との関わり

魚種は問わず、小さなものを総称する。メダカという固有種がいることは知らなかった。雑魚(ざこ:はや)の孵化したばかりの「めんざっこ」は流れの緩やかな岸近くに溜まっていたので、手拭いで囲って掬い取り、家の泉水に放した。何年かすると思わぬほど大きくなっていた。本当の「メダカ」という魚種は大きくはならないという。

めんざっこ

メダカ
子どもの世界と遊び

「売僧(まいす)」が語源で、「めーす」に転訛したものである。世間に媚びを売る悪徳な僧侶から派生した言葉で、悪い行いという意味になったという。「売」は焼売(しゅうまい)と同じく「まい」とも読む。「めいす」は当時から年寄り言葉であった。婆ちゃんは仕事も熱心であったが、孫を叱るのも手厳しかった。怒気を含んだ「そだめいすしちゃだめだ(そんな悪さはしてはいけない)」という言葉が今でも心に残っている。世間体を重んじることからの言葉であったろう。

めーす

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