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関西

3_10 女人高野室生寺と女人禁制の大峰山

<室生寺山門:晩秋でモミジが見ごろ>

青壮年のころは海外登山隊にも参加していましたが、白血病で1年間の療養を強いられて以来、高みを目指す登山が出来なくなり、歴史を体感できる山や神社仏閣をめぐっています。

女人高野室生(むろう)寺/真言宗の総本山の高野山金剛峰寺は明治半ばまでは女人禁制(にょにんきんぜい)の寺院でした。僧の修行の妨げとなるというのが主な理由でしょう。女性蔑視という考えはないと思われます。高野山にお参りできない代わりに、同じ宗派の室生寺は奈良時代末の創建になる古寺で、女性にも門戸を閉ざさなかったことから「女人高野」と呼ばれ、女性の帰依(きえ)者が多く、今でも参拝客の8割は女性だと言います。

屋外に建つ五重塔では日本一小さく平安時代初期の建立で、高さ16メートル、いかにも女人高野にふさわしいたたずまいです。国宝の11面観音も柔和なお顔立ちです。

近鉄大阪線で桜井から20分、大野室生口で下車、バスで10分です。

女人禁制の大峯山/奈良県吉野から和歌山県熊野への「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」は90㌔に及ぶ日本最長の厳しい道ですが、心の平安を求めて皇族・貴族までもが入峯(にゅうぶ)しました。「大峯奥駈道」の登り口に「女人結界門」があり、全国で唯一女人禁制の信仰形態を守り続けています。

社会が安定した江戸時代には、厳しい修験の他に、庶民も講を作って先達に導かれて入山するようになり、麓には宿坊を中心とする門前町が発達しました。ただ、今はバス道が山腹まで延び、歴史ある門前町を素通りし、芦峅寺、富士吉田など全国的にも危機的な状態です。

明治になって、女人禁制も解かれ、修験の山も「百名山」に選定され、今では女性登山者の方が多くなり、女人禁制は大峰山だけとなり、女人禁制が是非の議論がなされています。

晩秋の入山のため、大峰山頂直下の重要文化財の大峯山寺や周囲の宿坊はすべて閉ざされ、断崖絶壁に身を乗り出して修行をする「覗き」という体験もできず、そのためか、下山しても清浄にならず、六根の内で特に「耳(に)」が衰え、いっそう頑固になったような気がします。

熊野参詣道とともに「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産となった大峰奥駈道の一部を体験し、日本唯一の女人禁制の山が世界から公認されたということでしょう。

大阪から近鉄線で下市口駅まで2時間半、バスで門前集落洞川(どろかわ)温泉まで1時間20分かかり、アクセスの悪さは日本屈指、それだけに、山に向かうまでに心構えもしっかりしてくるような気がしました。

<大峯山登山口:「従是(これより)女人結界」>
<大峯山登山口:「従是(これより)女人結界」>

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