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中部

5_02 伊豆半島『しろばんば』と山葵(ワサビ)田

<井上家の本家:土蔵は移築されていた>

高校での教え子が三島に住み、知り合いだという修善寺駅前にある書店に案内してくれました。大きくはない書店ですが、伊豆関係の書籍を出版し、2階のカフェには伊豆に関係する書籍が閲覧できるようしてあります。伊豆の文化の奥深さを教えられました。

店主から伊豆の歴史や地理を学んだ後、教え子の運転で文学史蹟と山葵田を訪ねました。

『しろばんば』/伊豆の中央部にある湯ヶ島は、井上靖の自伝小説『しろばんば』の舞台です。「しろばんば」は伊豆の方言で、雪虫のことで、秋の夕暮れに空を浮遊します。

井上靖は、父が軍医として勤務していた旭川で生まれ、6歳で父の郷里湯ヶ島の祖母に預けられました。戸籍上祖母でしたが、曾祖父の妾で、本宅近くの土蔵で生活し、主人公の洪作少年を預かります。祖母おぬい婆さんは、世間からの負い目を払拭すべく洪作少年に愛情を一心に注ぎます。おぬい婆さんの死によって伊豆を去るまでの7年間、天城山麓の豊かな自然と人々との交流により、作家井上靖の土台が形成されました。

土蔵は別に移築保存されていますが、現地にあってこそ意味があるように思います。

洪作少年が過ごしていた同じ時期、川端康成が『伊豆の踊子』と湯ヶ島温泉に泊まっています。偶然とはいえ、伊豆の文学の層の厚さを感じました。

伊豆の山葵田/浄蓮の滝を訪ねた際、滝の近くに小さな山葵田があり、これが伊豆の山葵田かと納得していました。今回本格的な山葵田に案内してもらい、新たな発見がありました。

山葵田には、沢の斜面に沿って砂礫を敷いて沢水を流す渓流式などがありますが、伊豆の山葵田は、沢に石垣を積んで、下層部には大きな石を置き、上層部には砂礫を敷き、水や栄誉分を均質化し、不純物はろ過するという「畳石式」の栽培です。江戸時代末に開発された方式で、作業効率が良く、安定的な収量を得ることになりました。

伊豆半島は雨量が多く、天城山系の火山性の浸透水と豊かな森林に恵まれ、年間を通して低温の水をかけ流しておくことができます。山葵は夏の日差しに弱いので、水に強いヤマハンノキを植栽して日光を遮る工夫をし、上質の山葵を生産しています。

長野県の安曇野は、掘り下げて伏流水を使う「平地式」で、観光地になっています。一方、山間にある伊豆の山葵田は、修善寺からの道が狭く、圃場には駐車場がありません。作業している方の許可を得て、軽トラの隣に止めさせていただきました。

畳石式の山葵田は、環境との共生が評価され、世界農業遺産に指定されています。

<畳石式:石の間から水が流れ落ちる>
<畳石式:石の間から水が流れ落ちる>

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