挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
挨拶の言葉として「今日はあったかだね」と言う。暖房機の無かった時代、風っ吹きの日が続いた冬、年寄りたちにとって「温っか」な日は何よりで、縁側の日溜まりでお茶のみ話に花が咲いた。「あったかだ」が挨拶になるのは自然なことであった。
あったか
温っか
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
後味が悪いという意味では使わない。家庭では、食後の味のことなどを話題にすることはなかった。1度出した御馳走の後で「一緒に出さねで、後口になっちゃったけど」と勧める。出し遅れた時の挨拶にもなった。
あどくち
後口
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
「居るかい」の転で、「居ますか」という他家をを訪問するときの挨拶。中にいる婆ちゃんは「居るよー。お寄りなんしょ」と言って招き入れる。表 面的には敬語的な表現ではないが、親しい近所の人の付き合いにはふさわしい挨拶の言葉である。
いっけー
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
江戸言葉が残っていたもので、お茶飲み友だちが来ると、婆ちゃんは「おあがななんしょ(おあがりなさい)」と勧めた。「なんしょ」は「なさい」と同じ意味の尊敬の補助動詞である。「お座りなんしょ」とか、「おあたんなんしょ (お当たたりください)」と囲炉裏の火に当たるように勧める。「なんしょ」は響きが良くて、温かみがあった。
おあがんなんしょ
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
座蒲団を使ってお座りくださいという意味。接頭語にさらに尊敬語表現の「なんしょ」を重ねたもの。祖父母との生活時間が長かったので、隣近所の年寄りのお茶のみ話の中で、その当時でもすでに年寄り語で あった敬語についても様々耳にすることがあった。その代表が「なんしょ」であった。まず人が訪ねてくれば「おはいんなんしょ(お入りなさい)」、次に「おがげんしょ(お掛けなさい)」と囲炉裏旗へ誘い、さらに「おぢゃおあがんなんしょ(お茶おあがりなさい)」と勧める。良い人間関係が見えてくる。
おあてなんしょ
お当てなんしょ
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
雨の大降りだが、挨拶用語 として使われる。「いや今日は大降りだね」と、「いい天気だね」などとともに使われる。農業は天気に支配されるので、天気の善し悪し、寒暖などの挨拶用語も多い。「ちかあがりで困りやんしたね(長雨で困りましたね)」とか、「お湿りが欲しいね」とか、雨に関するものが多かった。雨が降るかどうかは農作業に影響するから、地域社会での挨拶用語にも取り入れられたのであろう。
おおぶり
大降り
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
「お稼ぎなさい」という意味で、これからまだ仕事が続くことへの慰労でもある。「さようなら」などの形式的な別れの言葉よりも生活実感がこもり、人と人との繋がりを強く感じる言葉である。「なんしょ」は尊敬の意味を表す補助動詞で、「おあがんなんしょ(お上がりください)」など、様々な場面で使っていた。
おかせぎなんしょ
お稼ぎなんしょ
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
「お構えなく」の丁寧表現。当時でも年寄り婆さんが使った言葉であった。江戸の言葉などがそのまま残ったことも考えられる。八溝の言葉の中には、磐城方面の東北南部や常陸北部と共通する古い江戸言葉が、物とともに海をとおして入って来たと思われるものも珍しくない。男の人は使っていなかったから、遊里の言葉が伝播したとも考えられる。
おかまえはりゃすな
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
隣近所お互いに融通しあい、物の貸し借りが多かった。借り物をする時は「おかりもしゃす」と挨拶した。また、庭を通って通過する時も、「おかりもしゃす」と言った。八溝の敬語の代表であったが、今は「お借りします」になり、めいめいで道具も持っているから、貸し借りも少なくなった。
おかりもしゃす
お借り申します
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
「お粗末様でした」というのは、もてなしの内容への謙譲表現である。それに対して、盛りが軽いことを詫びながら「お軽うございました」と言った。味などの問題でなく、提供する量の問題が優先されたのは自然なことで、実感がこもっている。今でも年配者は使っている。敬語が少ないと言われる八溝の言葉で、残しておきたいものの一つである。
おかるーござんした
お軽うござんした
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
「ご馳走様」に、さらに敬語の「お」を付けて最高の敬意を表した。有り難い振る舞いに対して、御馳走様だけでは足りなかったので接頭語の「お」付けて、より敬意を表した。我々の世代はまだ「おごっつぉさん」と使っている。
おごっつぉさま
お御馳走様
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
「おくれ」が濁音化した。腹が減れば「何がおごれ」と、何でも良いから腹 の足しになるものをねだった。補助動詞ふうに、他の動詞について「してください」の意味にもなる。その際は「お」がなくなり「貸してごれ」となる。この言葉は今でも現役で使われ、「貸してください」と言うのはよそよそしくて気恥ずかしい。
おごれ
お下れ
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
「おくれなんしょ」が転訛した言葉であろう。婆ちゃんが使って、爺ちゃんは使ってない言葉であるから 、女性の言葉であろう。八溝の言葉の中には、千葉や茨城を通して江戸言葉が移入され、戦後まで残っていたと思われる言葉が少なくない。近しい関係でも、改めての集まりの時は、婆ちゃんはいつもと違う言葉を使い、何かよそよそしさを感じることがあった。
おごんなんしょ
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
遠慮することをいう。挨拶の意味で辞宜から来た言葉。「そん なにおじぎ(遠慮)しないで、さくく(遠慮なく)お上がりなんしょ(なさい)」と言ってお茶や食べ物を勧める。反対に、「あの人はおじぎばかりしてん(しているの)で付き合いにくいね」などと言うことになる。隣近所の付き合いは程よい「おじぎ」が必要で、反対に「おじぎ」ばかりして「つっかけ持ち」になっては円滑に進まない。
おじぎ
辞宜か仁義
挨拶語 敬語 つなぐ言葉など
婆ちゃ ん子であったので、今では使われなくなった年寄り言葉を耳にする機会が多かった。「おだのみしゃす(よろしくお願いします)」も、当時すでに婆ちゃんの言葉であって、若い人は使っていなかった。明治半ば生まれの婆ちゃんは、江戸言葉を使っていた。その古い言葉を耳にしていた最後の世代になってしまった。貴重な経験である。
おだのみしゃす