体の名称と病気やけが
仰向けになること。「じでんしゃ(自転車)ででんながって(転んで)、あおるげにになっちゃった(仰向けにひっくり返っちゃった)」となれば、勢いよい良く仰向けになるように転倒したことになる。動きが激しかったから「あおるげ」になることが多かった。
あおるげ
体の名称と病気やけが
顔が青白く活気のない子どもを言う。戦後の25年頃の小学生には、栄養不足か「あおんぞ」が多かった。支援が必要な子どもたちであったろうが、遊びも仲間はずれになっていた。仲間はずれにする中心になっていた自分を振り返ると、何と配慮がなかったかと、反省している。
あおんぞ
青んぞ
体の名称と病気やけが
擦過傷で皮がむけたり腫れ上がった状態。ひどく出血しているのではない。砂利道というより玉石のような不揃いの石が敷いてある道路では、自転車とともに転倒して、膝を赤むくれにしたことが何度かあった。校庭で転んで転んで皮がむけてしまったこともある。保健室がなかったから、職員室で担任の先生に治療してもらった。職員室には叔母が別の学年の担任でいたので、「またか」という顔で見ていた。
あがむぐれ
赤むくれ
体の名称と病気やけが
気管のこと。「めど」は針めどと同じように、狭い穴のこと。急いで飲んで「息めどに水入っちゃった」と、むせかえるのであった。年を取ってからは餅が息めどには入らないように注意をしている。
いきめど
息めど
体の名称と病気や けが
広辞苑には「熱る(いきる)」とあり、蒸し暑くなる、ほてるという古い用法が載っている。この用法がそのまま残り、「今日はなんぼにもえきれるね(今日はひどく蒸し暑いね)」などと使っていた。そんな日は、「え(い)きり」にならないよう、梅干しに砂糖つけて、いつもより多くお茶を飲んだ。スポーツドリンクと同じ原理である。熱中症など「いきれる」ことで罹る病気そのものを「えきり」と言った。医学的な知識のない時代に、年寄りの経験は今の生理学にかなったものであった。
いきれる
熱れる
体の名称と病気やけが
怪我をすること。「痛い」という語がそのまま怪我をするという動詞になったもの。「転んで、膝っかぶいだぐしっちゃった(転んで膝頭を怪我してしまった)」と泣きべそをかいて職員室に行った。先生が水で洗って赤チンキを付けてくれた。直接的な表現で、生活実感が良く出ている言葉である。
いだぐする
痛くする
体の名称と病気やけが
リンパ腺などにできる腫れ物を「いねご」と言った。脚の関節や耳の後ろにしこりができて、時には熱を出すこともある。裸足で遊ぶこともあり、けがをしても、十分な治療もしなかったから、傷の場所から細菌が入り込み、股の付け根のリンパが腫れて、しばしば「いねご」ができた。
いねご
体の名称と病気やけが
熱中症のこと。熱中症ということばはいつから普及してきたのか。幼稚園でも「こまめに水を飲みましょう」と熱中症対策が欠かせない。昔は水を飲むと疲れると言って、運動部の活動中は水を飲ませてもらえなかった。ただ、重労働の山仕事では汗をかくので、竹で出来た水筒「竹すっぽ」を腰に下げて出掛けた。経験から、汗をかく真夏の下刈りの時は「えきり」にならないために必要だったのである。婆ちゃんは「えきりになんねように」とすっぺー(酸っぱい)梅干しを食べていた。理にかなった対策であった。
え(い)きり
体の名称と病気やけが
方言ではない。人に寄生する線虫である。今では全く無縁の存在だが、小学生のころは回虫検査があって、マッチの箱に便を入れて学校に持って行った。後日検査の結果を受けて「虫下し」を飲むことになる。しばらくして尻に違和感があり、母親に話したところ、30センチメートルもある白い回虫を引っ張り出してくれた。栄養が十分でない上に、回虫に住み着かれては成長に影響したことは言うまでもない。人糞を肥料に使っていたことから、生野菜などを通して人に寄生していたが、その後人糞を使うことがなくなり、日本の子どもからは回虫もほぼ絶滅した。
かいちゅう
回虫
体の名称と病気やけが
「かさぶた」が「かさっぽ」になったのであろう。衛生状態が悪く、しかも栄養が悪い時代にあって、子どもたちには「かさっぽ」がよく出来た。富山のどっけしや(毒消し屋)の置き薬も付けたが、薬がもったいないので、カエルッパ(オオバコ)を焼いて張り付ける民間療法をした。時にはそのままにしていたので、顔から頭まで「かさっぽ」だらけの時もあった。頭にも「かさっぽ」が出来て、禿になっていた友だちもいた。「禿かんぱ」である。
かさっぽ
瘡っぽ
体の名称と病気やけが
広辞苑に載っているが、漢字は充てられていない。かぶれることを言うが、特に漆に「かせ」た時は「漆負け」という。また、流行や人の影響を受けたりすることにも使い、「不良仲間と付き合ってかせちゃった」などと使った。流行のファッションに「かせ」てマンボズボンをはいていた高校生も多かった。
かせる
体の名称と病気やけが
「かじかむ」が標準語で、手やあしが凍えて動きにくくなること。今よりも寒さが厳しく、冬の朝は氷点下10度以下になることも珍しくなかったから、手足の先はいつも「かちけ」ていた。手はメナシだらけ、メンタムを擦り付けたが、時には血が滲み出てきた。踵(かかと)のアカギレには火であぶった膏薬(こうやく)をなすり込んだ。今はスクールバスで通い、運転手さんが温めてくれているから、手足が「かちける」こともなくなった。その分、季節感や寒暖への感受性や順応力が落ちてきているのではないかと心配である。
かちける
悴る
体の名称と病気やけが
特に女性が内股で歩くことで、ガニマタの反対。わざと上品に見せるために内股にする人もいたが、生まれつきの人もいた。クラスの仲間にも「かっこみあし」がいたが、みんなで平気で話題にしていた。当時の社会のせいではあったろうか、身体的な欠陥を言うことに対して注意する大人もいなかった。自身の至らなさだったと改めて反省している。
かっこみあし
掻き込み足
体の名称と病気やけが
「しゃがむ」に接頭語「かっ」が付いて、音韻変化した。しゃがむことで、腰をすっかり下ろすことではなく、普通に座ることは「ぶちかる(腰を下ろす)」と言っていた。地面に腰を着けないで屈み、両膝を揃えて「かっちゃがむ」のはコンビニの前で高校生がよくやっている。若いからできるので、体が硬くなった年寄りには無理である。
かっちゃがむ
体の名称と病気やけが
川にいる河童でなく、山仕事をして鎌で刈り払った後の鋭利な篠や木の株をいう。山仕事ばかりでなく、子供たちも川や山であ遊んでいる時、足中草履(あしなかぞうり:足半分の短いぞうり)なので、足に突き刺し、「血だら真っ赤」になることが多かった。
今は草刈り機であるため、切り跡が鋭利でないので、「かっぱ」を踏んでも突きとおすことはないし、靴底もしっかりしているので、よほどでないと「かっぱ」をふんぬき(踏み抜き)をすることはない。
かっぱ
体の名称と病気やけが
「へずる」は、削り取ることで、「かっ」は意味を強める接頭語。「かっ飛ばす」などと同じ。体を「かっぺずる」は擦過傷を作ることである。膝っかぶ(膝頭)はよく「かっぺずり」、今も傷が残っている。
かっぺずる
体の名称と病気やけが
穴をほじることに「かっ」が付いたもので、意味が強まっている。注意散漫であったり、他人の通告を無視していたので、「いい加減に聞いてねで、耳かっぽじって聞いとけ」と注意された。地方の言葉らしい響きがある。
かっぼじる
かっ穿る
体の名称と病気やけが
「からわけ」は装飾のない食器で、京都のお寺で「かわらけ」投げをしている所もある。古代の釉薬(ゆうやく:うわぐすり)を使わなかった時代の名残であろう。この装飾のない土器から、まだ陰毛が生えてなく状態を指す言葉となった。「おめーまあだかわらけだ(お前はまだ陰毛が生えていない)」と言われ、何事につけ奥手であったため、川遊びなどの時には恥ずかしい思いをした。少年時代には、相手が「かわらけ」であるかどうか意識しながら、必要以上に股間に関心を持っていた。
かわらけ
瓦笥
体の名称と病気やけが
禿げのことだが、年寄りの禿には使わなかった。傷などで毛の生えていない仲間を「はげかんぱ」と言っていた。所々に禿げたところがある場合は「砂利かんぱ」である。多くは病気の後遺症であったのだろう。五厘の短髪であったから余計に目立った。
かんぱ
体の名称と病気やけが
置き薬に対しての言葉で、町の薬局で買う薬のこと。「生」は「生そば」などと同じように、新鮮なという意味であろう。町には老舗の薬局があったが、余程でなければ買うことはなく、置き薬を使った。また、風邪を引けばネギを焼いて首に巻いたり、傷が化膿すればアオキの葉を焼いて貼り付けるなどの、民間療法で済ました。今でも風邪を引くと、ネギ味噌をたっぷり入れた汁を飲むと良くなるような気がする。
きぐすり
生薬
体の名称と病気やけが
「くるぶし」のこと。「きびすを返す」と言う時の「きびす」は踵のことであろうが、八溝地方では「くるぶし」を指す。踵は「かかと」という言葉があり、「くるぶし」という言葉はなかった。「きびすひっこぎっちゃった(くるぶしを捻挫してしまった)」という。一般的に踵は捻挫しない。きびすと踵が混乱しているのは全国に見られるという。
きびす
体の名称と病気やけが
「かさっぽ」ともいう。吹き出もののこと。直り掛ける時の「かさぶた」のことである。「くさ」は「かさ」の転訛であろう。不衛生のうえ、体質からであろうか、しばしば吹き出物が出来て、ドクダミの葉を炙ったものを貼ってもらった。効果のほどは分からない。今でも頭に吹き出物が出来て皮膚科通いをしている。
くさっぽ
瘡っぽ
体の名称と病気やけが
打ち身などで黒く腫れ上がること。激しい遊びが多く、そのうえお調子者であったからやたらとケガをした。体のあちこちを打撲し、しばしば「くろなじみ」を作った。子どもにとって、この程度は治療の対象にはならなかった。
くろなじみ
黒なじみ
体の名称と病気やけが
飲み込まず吐き出すこと。饐(す)えた味がしたりし たときに、意識して吐き出すのであって、無意識に出 る「げろ(反吐)」とは違う。どうしても噛み切れな い刺身の筋などは「くんだす」ことがあり、年ととも にくん出すものが多くなった。
くんだす
食ん出す
体の名称と病気やけが
しゃっくりのこと。子どもの頃にはしばしば「けっくり」がでた。原因は何か、心因性であったろうか。大きく息をして、吐き出した後、できるだけ我慢をする。何度か繰り返すと直った。それでもダメな時は、茶碗に箸を十字に置いてから一気に水を飲んで息を凝らすこともした。このまじないの効果はあったのだろうか。
けっくり