41 意味の変わった言葉
言葉は生き物です。新しく意味を付加したり、逆に意味を狭めたり、さらには使われなくなる言葉がある一方で新しい言葉も生まれます。言葉は時代とともに変わって行きます。
『やがて』 ラヂオで、「やがて12時をお知らせします」とアナウンスがあり、予告音が鳴り、最後にプーンと時報音が鳴りました。ところが、いつの間にか「間もなく12時の時報です」となりました。「やがて」は広辞苑に二通りの意味が載り、①は「時を移さずすぐに」、②には、程なくの意味が載っています。今では②の意味だけに限定され、「やがて桜の季節になります」と使われます。NHKも時代とともに変わったのでしょう。八溝の「やがて」は「やがーで」と転訛し、ほとんどアテに出来ない先の時間を指します。「買っとごれ(買って欲しい)」と頼んでも、「やがーで」と言われれば、諦めるほど先のことでした。
『自然薯』 国道の脇などに「自然薯特売」という桃太郎旗が立っています。自然は「じねん」とも読み、広辞苑には、「天然のまま人為が加わらないさま」とあります。さらに「自然薯」は「自然生」が転訛したものともあります。八溝でジネンジョと言えば、藪などに自生して手の加えられていない、文字どおり自然の物を言います。しかし、今の自然薯は畑の中の塩ビ育ちの形の整った物のことです。本来の「自然薯」は手に入りにくくなってきているので、これからは栽培種の名前になっていくでしょう。
『金肥(きんぴ)』 厩肥(きゅうひ:馬肥のこと)や木の葉を発酵させた堆肥など自家製肥料に対して、金銭を払って買った肥料のことを金肥と言っていました。江戸後期、下野国内では煙草や麻、綿花の栽培が盛んになり、鬼怒川や那珂川の水運により房総方面から干鰯(ほしか:乾燥イワシ)や〆粕(油など絞った後の粕)などが大量に移入され、肥料屋から買うものが「金肥」という言葉になりました。その後、化学肥料の普及により、「金肥」は化学肥料のことになり、現在では家畜もいなくなり堆肥も作りませんから、化学肥料がほとんどで、堆肥などと対比した「金肥」という言葉は不要となり、無機とか有機とかの区別されるようになりました。
『押し合い』 押し合いへし合いの「押し合い」と違って、株式の相場で値動きがない時の「押し合い」の意味に近い感覚です。親戚同士でお互いに目出度いことが重なると、「今度は押し合いすっぺ」といって、祝儀のやり取りはしないことになります。この言葉も、中高年の言葉となり、間もなく使われなくなりなりそうです。
『やなさって』 「あした」と「あさって」の次の明明後日は「しあさって」か「やのさって」(やなさってとも)か、あるいはその逆か自信がありません。「さあさって」もありましたがいつでしょうか。八溝と宇都宮は違うので、確信が持てないので3日以降の約束は曜日や日付でしています。