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32 さまざまな体の部位

体の部位を表す言葉は地域差が大きいうえ、同じ言葉で違う部分を指すことがあります。病院や学校では行き違いがあっては困ります。今は標準語になりました。
『きびす』「きびすを返す」といえば、踵(かかと)を反対に向けることですが、八溝の「きびす」は踝(くるぶし)のことでした。「きびすひっこぎった(捻挫した)」と言っていましたから間違いありません。踵は捻挫しません。
『ひじっこぎ』 小学生の時に跳び箱を跳び損ねて「ひじっこぎ」をひっこぎり(脱臼)、村内の骨接ぎに行きました。今の整骨院と違って普通の農家の母屋でした。両足を脇の下にいれて力一杯手首を引っ張って、脱臼した「ひじっこぎ」を元に戻してくれました。肘に「こぎ」が付きましたが、左利きを「ひだりっこぎ」というのと同義でしょうか。
『どでっぱら』「土手腹」のことで、食事を勧める時は促音化しないで、「どではら一杯食っとぉごれ」と客人をもてなします。一方、「どでっぱら蹴っ飛ばされた」いえば腹部を強く蹴られたことです。ただ、「腹いで(痛い)とか「腹減った」という時は「どでっぱら」とは言わないので、「どでっぱら」は腹部を強調した表現の感じがします。
『けつめど』 肛門のことです。「けつ」は臀部を指しますし、「めど」は、針穴を「針めど」と言うように穴のことです。子どもの頃は粗雑な便所紙を使っていましたから「痔かた(痔のこと)」になり、「けつめど」が痛くなり、オロナインを塗ってもらいました。
『どんのっくぼ 』「盆の窪:ぼんのくぼ」の転訛で、後頸部のことです。盆は丸いことで、窪はへこんでいる部分なので、丸く窪んでいる場所を指します。発熱すると婆ちゃんが「どんのっくぼ」に梅干しを貼ってくれました。解熱効果があったのでしょうか。
『ひざっかぶ』 膝頭のことで、子どもの頃から注意散漫で「ひざっかぶをかっぺずる(搔きへずる:擦過傷)」ことがしばしばでした。「かぶ」は切り株の株か野菜の蕪か、あるいは鏑矢など、いずれも丸いものを指すと思われます。
『すねっぱぎ』 「すね」と「はぎ」という同じ意味の言葉が重なっています。「はぎ」は『おくのほそ道』の象潟の句に「鶴脛(つるはぎ:鶴の脛)」とあります。八溝ではやたら人前に出たがる人を「ですっぱぎ」と言います。「脛」と関係があるでしょう。
『いきめど』 気管のことで、息の通る穴のことです。急いでサツマイモを食べて「息めど」に入ってケックケックしました。今は高齢による誤嚥に気をつけなくてはなりません。
『たなけっつ』 尻が目立って出ているのが「棚っけつ」です。当時は誰もズボンを穿いていましたから、中学生になると「棚っけつ」の女子が魅力的で気になりました。
『でび』「おでこ」は「お凸」と書き、額が際だって目立つ人のことを指していましたが、今は普通に額そのものを指す言葉として使われています。子どもの頃使っていた「でび」は「出額(でびたい)」の略で、額が目立つ人を指していました。

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