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30 子どもの病気と怪我

衛生状態が悪かったこともあり、しばしば病気になりました。その上注意力欠陥の多動児であったことから怪我も絶えませんでした。
『やんめ』 「病み目」の転訛、正式な病名は流行性角結膜炎です。囲炉裏があり、カマドで火を焚くなど、いつも煙が家中に充満していました。そのうえ、不潔な手で擦りましたしから、目が充血し、痒いうえに「目やぎ(目やに)」が出て瞬きも不自由でした。衛生への関心も薄く、学校で感染することも多かったと思います。
『みみだれ』 「耳垂れ」のことで、中耳炎や外耳炎が原因で耳から膿が出ることです。夏の水浴びをした後に耳に入ったままにしておくと、耳の後ろが熱くなり、やがて膿が出てきます。マッチ棒に綿を付けて膿を拭い取ってもらいました。ひどい痛みでしたが、置き薬の頓服薬を服用し、自然治癒を待ちました。当時、「耳垂れみっちゃん目はやん目」という囃し言葉がありましたから、多くの子どもが罹患したと思われます。
『めなし』 踵に出来るのは「ひび」と言い、火箸で熱した膏薬(こうやく)を塗り込めます。それに対して、手の甲に出来るのが「めなし」で「めなしが切れる」と言って区別していました。クリームがなかったので、頬っぺたも「めなし」が切れました。夏の間にヘチマの蔓から採ったヘチマ水が有効でした。「母さんの歌」の「あかぎれ」に糠味噌擦り込むのはどうしてでしょうか。かえって悪化するのではないかと思いますが。
『とがめる』 人を責め立てる意味でなく、『広辞苑』の二番目に、自動詞として「傷が悪化する」とあります。八溝でも、傷が悪化して化膿することに使いました。尖った篠を踏み抜きをする「かっぱふむ」ことや、鉈などの刃物でしばしば深い傷をつくりましたが、赤チンキで消毒する程度だったので、よく「とがめ」ました。今は「化膿する」と言い、「とがめる」は年寄り語になってしまいました。
『はらっぴり』 「腹放り」の転訛、「ひる」は体外に出すことで古くから使われています。きちんとした排便習慣ができていなかったうえ、しばしば下痢をしてお漏らしをし、学校からペンギン歩きで帰って来ました。その都度正露丸(征露丸と書いてあった)の御世話になっていました。ただ、今は高齢となり「はらっぴり」より便秘で苦しんでいます。
『いねご』 リンパ節炎のことで、怪我を放置していて「ももった(腿)」の付け根や腋の下のリンパ節が腫れました。不潔であり、怪我をしても消毒が十分でないことから化膿することが多く、しばしば「いねご」ができました。今は使われなくなった言葉です。
『かっぱ踏む』 藁草履やゴム草履で藪を歩いていると、鋭い切り口の篠などを踏み抜きます。「かっぱ踏む」と言いましたが、「かっぱ」の語源は分かりません。エンジンの草刈り機でなく鋭利な鎌での藪払いでしたから「かっぱ踏む」と深手となりました。自宅で処置できない時』村の診療所に行きました。注意力が不足していたのでしょう。

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