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25 子どもの遊び

都市部から離れた八溝の子どもたちは、限られた素材を生かしながら様々遊びをしていました。町場で流行したベーゴマは当地区の方には伝播しませんでした。購入することが出来なかったからです。その代り、もっとシンプルで興奮する遊びがありました。
『釘ぶち』 一番大きな5寸釘を使い、順番を決め、釘の頭を持って地面に強く投げて突き立てます。相手も同じように打ち付け、打ち付けたところを線で結び、交互に線を引き相手が線の外に出られなくなれば負けで、釘は相手のものになります。刺さらずに倒れたら1回休みですから、地面に良く刺さる釘が必要です。そのため釘の先端を石で磨き鋭く尖らします。学校での遊びは禁止されましたが、八溝の子は怪我をしませんでした。
『猫玉鉄砲』 猫玉はリュウノヒゲの実と言われていますが、わが家の方で使ったのは身近にあるヤブランノの実でした。秋になるとヤブランは紫色の実をたくさん着けます。果肉が薄く種は球形で固いので、篠鉄砲の弾(たま)に最適です。実がぴったり入る口径の筒を作り、実を押し出すポンプも篠で作ります。どの玉も弾き飛ぶとは限りませんが、うまくいくとポンと音を立てて2㍍ほどは飛びます。同じく杉の実鉄砲もありましたが、こちらは猫玉ほど飛びませんでした。篠は「肥後守」という小刀で細工しました。「肥後守」は遊びを支える必需品で、今でもまだ大事に使っています。
『水車』 「すいしゃ」でなく「みずぐるま」です。流下する沢が集落の中を流れていましたから、川の本流とともに大事な遊び場でした。子どもでもコントロール出来る流量でしたので、堰をつくり竹のとよ(樋のこと)で引いて落差をつけます。整形した杉っ皮を篠に挟んで羽根車を作って動力源とします。回転軸に溝をつけた木製の車に糸を掛け、ミニチュア精米機に連結させるとクランクが上下します。秋になって水が冷たく感じると自然消滅的に「水車」遊びは終わります。
『下駄スケート』 冬になると、集落の氏神様の下にある日陰の田んぼが凍結します。地区の子どもたちが集まり、氷の上に出ている稲株を切り、竹箒できれいにしてからバケツで水を撒きます。製氷に参加しないものは滑る資格がありません。下駄にスケートのブレードを止めたもので、踵が上がらないように紐で結びつけます。上級生になると、カーブで「ちどり(足をクロスさせること)」が出来るようになりました。学校の近くであったので、予鈴を聞くまで滑っていても走れば間に合いました。
『ぱちんこ』 冬の遊びは夏に比べて川遊びが出来なくなるので、遊びの行動範囲が狭くなります。一方で、ちんちめ(すずめ)が餌を求めて屋敷廻りに群れをなしてやって来たので、別の楽しみができました。ざくまた(Y字状の部分)の枝に自転車の古チューブを利用してパチンコを作りました。時々当たり、死んだばかりのちんちめに触ると体温が伝わってきました。鳥獣保護などという考えはなく、射当てることだけが目的でした。

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